大阪市仏教青年会

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大 阪 の 誇 り

〜 兄・佐伯祐正、弟・佐伯祐三 〜


「大阪の誇り」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。各人様々な誇りがあるだろうが、

ここでは佐伯祐正・祐三兄弟を取り上げたい。




現在、大阪市立美術館で「佐伯祐三展」が開催されている(19日まで)。

佐伯祐三は大阪が生んだ天才画家としてあまりに有名であり、今なお熱狂的なファンが多い。

彼は主にパリの街角を描いた作品で有名であるが、「佐伯祐三展」では学生時代の自画像から、

晩年のパリでの作品まで網羅されていて、佐伯祐三の世界が堪能できる。

しかし彼が実は大阪の寺の生まれであることは、一部のファン以外の人にはあまり知られていない。




佐伯祐三1898年(明治31)現在の大阪市北区中津、浄土真宗本願寺派の房崎山光徳寺の次男として

生まれた。大阪府立北野中学校(現北野高校)時代から油絵を描き始め、中学卒業後に東京に出て、

東京美術学校(現東京藝術大学)に入学。卒業後の
1923年(大正12)に渡仏し、主にパリを拠点とし

作品を制作する。その後一旦は帰国するが、すぐにパリに戻り制作に没頭する。

しかし、残念ながら
1928年(昭和3年)に30歳の若さでその生涯を終えることになる。

祐三の生涯や作品については各方面で詳しく述べられているので、これ以上は触れないが、

彼の独特の構図と力強い画風は人々を惹きつける。




さてこの祐三の2歳違いの兄が、第15代光徳寺住職の佐伯祐正である。

祐正は
1896年(明治29)生まれ。

平安中学校(現龍谷大学付属平安高校)を経て現在の龍谷大学に学んだ。

在学中の
1920年(大正9
)に父の死去により光徳寺を継承。

翌年自坊にセツルメント施設「光徳寺善隣館」を開設した。

この施設こそが彼が理想としていた寺院の実践形態であった。




彼は現実の仏教が非社会的で、寺院も閉鎖的で、

人々の直面する苦悩に対し慰めようとしかしないことを批判し、

それに立ち向かう勇気を持たせる、現実的、社会的な仏教を求めた。

また、そもそも寺院は住職の私有物ではなく、公有的存在であると考え、

寺院に門信徒のみならず地域住民の施設としての役割を持たせ、地域に貢献しようとした。

彼は住民の
生活レベルを向上させることを目的とし、その具体的な方法を物質的救与によらず、

人格的交流つまり
人と人とのふれあいを基調とすることで対応し、

その改善に着手させる自覚的・教育的運動を展開しようとした。

そしてこれは
セツルメントの中心思想であると受け止めた。

セツルメント事業と寺院は多くの共通点があり、寺院建立の趣旨に従って活動すれば、

それが自ずとセツルメント活動となり、理想的な寺院となると考えたのである。




では「光徳寺善隣館」ではどんな活動が行なわれていたのだろう。

当初は少女のための夜間裁縫塾、子どもたちのための日曜学校、図書室、

そして幼稚園やその母たちに母親教育も行なった。

その後都会生活者のために、豊中の刀根山にカントリーハウス(刀根山山荘)を建設、

また蔵書
5千冊の図書館、日本初のお寺カフェ、さらに母子寮を開いた。

これらの活動は次第に宗教部、教育部、会館部、助成部として整えられた。

宗教部では、説教・講演・助葬・冠婚葬祭等。

教育部は、図書館・読書クラブ・幼稚部・母の会・裁縫部・蛍雪クラブ(学童保育)・栄養給食等。

会館部は、セツラー室(住み込みボランティア)・貸し会議部屋・カントリーハウス等。

助成部は、方面委員・託児・授産・法律相談等。

年間利用者数は約
10万人に上り、また法務係を設置し、係が檀信徒の家庭を訪問し、

その生活状況の把握と諸問題の発見を行い、効果的な活動につなげるように努めた。

一般の寺院では、このうちの一部を担っているだけであるが、

祐正は彼の理想とした寺院の実現に向かって突き進んだのである。

しかし、
1945年(昭和2061日大阪大空襲で光徳寺善隣館は全焼。

彼もこの時に重傷を負い、同年
9月に49歳で往生された。



それぞれの道を追求し、志半ばで逝ってしまった佐伯祐正・祐三兄弟。

しかし、祐三が描いた作品は今でも人々に刺激と感動を与え、

祐正の理想とした寺院のあり方は現在でも私たちに多くのことを教示してくれる。

私はこの佐伯祐正・祐三兄弟と同じ大阪で生まれ育ち、

浄土真宗本願寺派僧侶として活動していることを誇りに思う。


  平成20年10月

大阪市仏教青年会 副会長  木 村 慶 司 (浄土真宗本願寺派 栄照寺)


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